人間嫌いの小説家の嘘と本当
ドンッと目の前に置かれたのは、氷水が入った大ジョッキ。
なぜにジョッキ?しかも、大。
疑問に思いながらも、兎に角この熱さをどうにかするのが先。
藁をもすがる思いでジョッキに口を付け、焼け付く喉に流し込んだ。
けれど熱さは消えるどころか、全身に伝わったみたいで少し汗ばんでくる始末。
次第に、足元が雲の上にいるようにフワフワし始め夢心地になってくる。
あぁ、なんか気持ちがいいかも――。
私、夢を見ているのかもしれない。
目が覚めたら、きっと優しい笑みを浮かべた真幸が「おはよう」って言ってくれるんだ。
子供出来たとか別れるとか、きっと全部夢。
悪い夢、きっとそうだ。
目が覚めたら、幸せな未来が待ってる――。
途中誰かが呼んでいたような気がするけれど、心地よい気分に身を任せ、意識を手放した。