人間嫌いの小説家の嘘と本当

「櫻井。ちょっと出掛けてくる」



あぁ、今日もまた一人で出掛けていくんだ。
机に突っ伏したまま、そう思ってい居ると「蒼井様」と私を呼ぶ声が小さく聞こえ顔を上げた。

すると櫻井さんが、何かを訴えるように視線を侑李の方へ何度も動かしている。
これは、もしかして付いて行けっていう事なのかな?

ええい。ままよ!!



「侑李。私も行っていい?」



意を決して立ち上がり侑李に声を掛ける。
けれど、やっぱり彼から返ってきた言葉は同じだった。



「ダメだ。怪我が治ってからな」



そう言い捨てると、そのまま背を向け玄関へ歩いて行ってしまう。
櫻井さんは項垂れる私の横を通り過ぎ、侑李の見送りに玄関へ行ってしまった。

薄情者!!っと叫びたかったけれど、結構精神的にダメージ受けているみたいで力なく椅子に座り、冷たくなった紅茶を喉に流し込んだ。



「……苦い」

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