人間嫌いの小説家の嘘と本当

✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎✎
✎✎✎✎✎✎✎✎



「アイツ、どこほっつき歩いてんだ。遅すぎるだろ」



なかなか帰ってこない蒼井様をイライラしながら、部屋を行ったり来たりを繰し、落ち着かない様子の侑李様。

そんな姿を珍しく思いつつ、感情豊かになっていく主を嬉しく思っていた。



「侑李様、少しは落ち着いてください。蒼井様も子供ではないのですから、もうじき帰ってこられますよ」



少しでも落ち着かせようと、彼の好きなコーヒーを淹れたものの、それを口にしようとはしない。こんな侑李様を見るのは初めてだ。

いつも彼が感情を露わにするのは、決まって蒼井様が関係している時だけ。
本当に彼女は、侑李様にとって特別な人になってしまわれたようだ。

寂しいやら嬉しいやら、少し複雑な気分ですね。

少し感傷的な気分に浸っていると、侑李様は痺れを切らしたのかスマホ片手に何処かに電話をし始めた。

掛けた先は、どうやら編集者の有栖川さんのようだ。
使用人として本来はしてはいけないのだが、思わず受話口から漏れ出る声に聴き耳を立ててしまう。



「おい。蒼井はいるか？……そうか。何？二時間も前に出たって?!」