人間嫌いの小説家の嘘と本当
侑李様は、舌打ちをし電話を切ると独り言のように「何してんだ。あのバカ」と呟く。
その後も落ち着きなく部屋を行ったり来たりを繰り返し、明日に締め切りが迫った小説も、手が付けられないままだ。
全く何をしてらっしゃるのか。
主にこんなに心配を掛けるなんて、使用人として失格です。
帰ってきたら、少しお説教をしなければいけませんね。
それから三十分ぐらい経ったころだろうか。
不意に侑李様のスマホが音を鳴らし着信を知らせた。
どうやらそれはメールの着信音のようで、急いで内容を見た侑李様の顔は、一気に強張り目を見開いていた。
瞬間的に、蒼井様に何か良からぬ事が起きたのだと直感が働く。
「蒼井様に何かあったのですか?」
戸惑い揺れる瞳で、かなり動揺している様子が伺える。
ここは私がしっかりしなければと、失礼を承知で主に渇をいれた。
「侑李様、しっかりなさいませ。何が起きたのか、話してください」
何度か目を瞬かせ我に返った途端、舌打ちをし髪を掻き乱す。
そしてソファに腰を下ろすと、両手を膝の上に組んで重い口を開いた。
それは蒼井様が自分のせいで捕まった、というものだった。