人間嫌いの小説家の嘘と本当

大人の女性か……誰だろう。

一瞬、どんな人ですか?と聞いてしまいそうになったけれど、誰と会っていたかなんて侑李本人から聞かなければいけない事だと思い直し、お礼だけ言って、すぐにBARを後にした。

もうすぐ十月だけあって、街灯に照らされた街路樹は、少しずつ色づき始め秋を予感させる。

さっきまでBARに居たのなら、まだ近くに居るはず。
辺りを見回し侑李の姿を探した。

出掛けた時の服装は、確か紺の長袖のシャツにグレーのスラックス。
百八十センチ近い身長の侑李は、街の中にいても目立つはずだ。

でも目立つのは嫌うから、普段からメインストリートは歩かない。

そうだ。いつも使ってる駐車場に車があるか確認してみよう。
もしあるなら、まだ街にいるはずだ。

この信号を渡って、その先を曲がれば……。
目の前で信号が赤になり足止めされてしまう。
早く行きたいのに、神様の意地悪。

あれ、侑李?
信号を渡った先に、サングラスをしてポケットに手を入れたまま歩いている

男性の姿が視界の端に映った。



「侑李っ、」


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