人間嫌いの小説家の嘘と本当

ビックリした……。
尾行がバレタかと思った。

まだドクドクと波打つ心臓を両手で抑えつつ、深呼吸を繰り返す。

また私は同じ過ちを繰り返そうとしているの?
力なくその場に崩れ落ち、膝を抱えた。

侑李が二股していたなんて――。
こんな裏切り方ってある?

私が、真幸に二股されてたって知ってる筈なのに。

あの“愛してる”は一体何だったの?
嘘つき。侑李のバカヤロー。
ああ、もう嫌だ。もう誰も信じられない。

足が痛い……。

蓮見先生や櫻井さんに怒られそうだな。
痛みが引いても完全に治ったわけじゃないから
無理はするなって言われてたのに――。

だんだん目頭が熱くなり、涙がとめどなく頬を伝っていく。
あの家にも暫くは帰りたくないな。

そうして、ある決意をしスマホをポケットから出し、ダイヤルアプリをタップした。

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