人間嫌いの小説家の嘘と本当
月が綺麗ですね
「蓮見先生から連絡が来た時には、驚きましたよ」
真っ白な壁に囲まれた無機質な病室の中、私はベッドに横になり、櫻井さんのお小言を聞いている。
あの日、私は以前「何時でも連絡くれていいからね」と、名刺を貰っていた蓮見先生に電話を掛けた。
足が痛いのもあったけど、あの家に帰りたくなかったのが一番の理由だ。
蓮見先生は、最初こそ驚いていたけれど、それ以上何も聞かずに足の腫れを診察し、私の様子を察してか「暫く、ここにいなさい」と言ってくれた。
その時には心底ホッとした。
少しの間でも、侑李の顔を見なくて済むならそれでいい。
今、彼に会ってしまえば冷静に話しをすることなんて出来そうにないから。
櫻井さんには、その日の内に先生が連絡をしてくれて、怪我の悪化として一週間ほどの入院が必要だと言ってくれたらしい。
ただ困ったことに今私が使っている病室は個室で、しかも、スイートルームかと思えるほど広いVIPルーム。
蓮見先生には、相部屋で良いと伝えたのだけど「今はココしか空きがないんだ。嫌なら帰るかい?」と言われていまい、それ以上何も言えなかった。