人間嫌いの小説家の嘘と本当
幸い、ここは他の部屋とは離れているらしく、人の声はあまり聞こえないので、気持ちの整理をするには一番良いのかも知れない。
「蒼井様、聞いているのですか?」
急に耳元で聞こえた声に、びっくりして肩が揺れる。
「は、はい」
反射的に返事をしたものの正直何を言っていたのか、考えごとをしていたせいで、全くと言って良いほど聞こえていなかった。
「あの……侑李は?」
「もちろん執筆中ですよ。何か伝えることでも、おありですか?」
私が入院した事で、心配をかけているんじゃないかと、彼の様子が気になったけれど……そっか、いつもと変わらないのか。
「いえ、別に……」
安堵と落胆が入り交じり、深く息を吐いて目を閉じた。