人間嫌いの小説家の嘘と本当
会いたくないと思っているのに、どこかで駆けつけてくれるんじゃないかって期待してる。
ワガママで嫌な女だ。
侑李の本命って、やっぱりあの人なのかな。
街で見かけた侑李と女性の姿を思い出し、両手をぎゅっと握りしめた。
「全く……何があったのか知りませんが、早く治して帰ってきてくださいね」
櫻井さんの優しい言葉に、ズキリと胸が痛む。
私はあの家に帰ってもいいの?
例え帰ったとしても、私の居場所はあるのかな。
暫くして櫻井さんは侑李の元へ帰り、病室には誰も居なくなった。
私はひとりベッドの上に腰掛け、何をするわけでもなく窓から見える空を眺めた。
風が強いのか雲が次から次へと流れていく。
何をする気にもなれず、心の中にポッカリ穴が空いたようだ。
私はどうしたらいいんだろう。
一日、二日、三日と何も解決しないまま時間だけが過ぎていき、その間も侑李が病室に訪れることは無かった。
もう私の事なんて必要ないのかもしれない。