人間嫌いの小説家の嘘と本当
顔を合わせなくて済むと思う反面、今頃あの女性と仲良くしているんだと考えるだけで、ジクジクと胸が痛みはじめる。
「ん。腫れも引いたし問題ないね。だけど顔色がよくないな。ちゃんと寝ているかい?食事もあまり摂っていないって報告来てるけど」
外来と同じ診察室で、私は蓮見先生に足の怪我を見てもらっていた。
先生はパソコンに経過報告を入力した後、私に向き直って心配そうに眉を下げる。
「動いてないからお腹空かなくて……」
私は、先生の言葉に咄嗟につくり笑いをして誤魔化した。
正直なところ、ベッドに横になっても侑李とあの女性のことが気になって、まともに寝ていないし食事も、あまり食欲が湧かなくて殆ど箸をつけずにいた。
「食事や睡眠も治療のうちだ。眠れないのなら、睡眠薬を出しておこうか?」
「あ、はい。お願いします」
何をしていても、侑李とあの女性の姿が頭をちらついて離れてくれない。
夢を見ることなく眠れるのなら有難い。
「蒼井くん。本心を見失っちゃいけないよ」