人間嫌いの小説家の嘘と本当

「本心を見失うなって、どう言う意味だろう」



ひとりになり、さっきの蓮見先生の言葉を思い返す。
スマホを手に“本心”の意味を調べてみた。

本心……本当の心。真実の気持ち。
私の、本当の気持ち――。

自分の胸に手を当てて目を閉じる。

真幸に振られた雨上がりの月夜。
天使とも悪魔にも見えた侑李に初めて会って、成り行きで、ボディーガードする事になった。

それから、俺様でワガママな侑李に振り回されてながらも楽しい毎日。
あまり感情を出さない侑李が、初めて笑顔を見せてくれた時は、私も櫻井さんも驚き喜んだのを覚えてる。

それからボディーガードとして身の周りを警護しながらも、彼に惹かれて行く自分に気がついた。

私が拉致された時も、自分を省みず傷だらけになりながら、助け出してくれて、この人が好きなんだなって改めて自覚した。

侑李が「愛してる」と言ってくれた時は嬉しかったな。
そう遠くない思い出が走馬灯のように甦り、懐かしく思う。

でも――。


< 272 / 323 >

この作品をシェア

pagetop