人間嫌いの小説家の嘘と本当
「直ぐに来れなくて済まない。どうしても一本、締切に間に合いそうに無かったから」
侑李は頭を掻きながら、一歩近づいてくる。
それを見て私は振り返り、反射的に叫んでいた。
「来ないで!」
胸が痛くて息が詰まる。
次の瞬間、ヒュッと喉が鳴った。
「ッ!?……」
はっ、あ……息が出来ない?……嘘でしょ。
パニックを起こしかけ喉を抑えながら、そのまま壁伝いにずり落ち床に蹲る。
この感じ、真幸に振られた時と同じだ。
過呼吸……こんな時に、なんで――。
息を吸うことが出来ず口を開いても空気が入ってこない。
浅い呼吸を何度も繰り返し、空気を体に取り込もうと試みる。
けれど、どんなに呼吸を繰り返しても思うようには出来なくて、焦りだけが増していく。
「蒼井?どうした、大丈夫か?」