人間嫌いの小説家の嘘と本当
「無理。俺、お前がいないと寝られない。大人しくしろ」
「わっ」
無理矢理、布団を私の上に掛けて引き込む。
そしてあっという間に、隣から寝息が聞こえ始めた。
嘘でしょ……どんだけ寝つきが良いのよ。
でも急いで小説書き上げたみたいだし、疲れてたのかな。
「仕方ないなぁ」
諦めて私も目を閉じた。
背中に感じる侑李の体温が温かくて気持ちがいい。
今までろくに寝ていなかったから、彼の寝息が子守歌の様に聞え、だんだんと瞼が重くなっていく。
そして夢を見た――。
いつか見た男の子じゃなく、真っ暗な闇の中に幼い私の声だけが広がる世界。
『お兄ちゃんの目、お月さまみたい。すごくキレイだね』
幼い頃、誰かに言った言葉。あれはいつの事だっただろう。
私は一人っ子だから、お兄ちゃんはいない。
だから何処かで会ったはずの男の子。