人間嫌いの小説家の嘘と本当
「綺麗……」
そう言えば、夏目漱石が「あなたを愛しています」という言葉を、月を使った言葉で言い表したとされる告白の一文があったような。
満月を見ているうちに、何かで読んだことのある一説を思い出した。
私は振り向き、侑李を起こさない様にベッドへ這い上がり、彼の隣に横になる。
そして、サラサラな白銀の髪を撫でながら呟いた。
「月が綺麗ですね」
その瞬間、パシッと侑李の髪を撫でていた腕を掴まれ彼の目が開いた。
ビックリした、いつか起きてたんだろう。
「……その意味、分かって言ってるのか?」
さっきまで見ていた満月には無かった、熱い想いを秘めた淡青色の瞳が私を射抜く。
けれど、それに臆することは無い。私は侑李を愛している。
私の本心は、彼を求めて止まないのだから。
「もちろん」
「なら、俺の答えは“時よ止まれ”だ」