人間嫌いの小説家の嘘と本当
近くにキャンプ場があったから、そこに連れて行ってみるか。
一歩前に踏み出すと、小さく「キャッ」と悲鳴が彼女から漏れる。
あ、ヤバい。俺の容姿をみて逆に怖がらせたかも。
少し後悔をし、後退ろうとすると小さな声が聞えてきた。
「お兄ちゃん、天使さん?」
「は?」
突拍子もない言葉に思わず笑ってしまう。
だけど、この子には俺が想像上の生き物である天使に見えるんだろうか。
「違うよ。一応人間だ」
そう。一応は、だ。
母と呼ばれる人から産まれた、人間だ。
だけど、両親からは一度だって人間使いされたことは無い。
唯一、執事の櫻井だけが俺を人扱いしてくれる。
アイツは迷惑なのかもしれないけれど……。
「そっか。良かった」
ホッと胸を撫で下ろし笑みを浮かべる少女。
さっきまで零れる程に流れていた涙は、いつの間にか止まっていた。