人間嫌いの小説家の嘘と本当
「何が可笑しいんだ?」
「別に……ただ、初めて侑李の家に来た時の朝を思い出していただけよ」
初めて来たときの朝って、何時の事だ?
記憶を手繰り寄せ思い出そうと試みる。
「覚えていない?あの時も、こうしてお互い裸のまま二人で寝ていたでしょ」
「あぁ――」
思い出し、深呼吸するように大きく息を吸い込み吐き出す。
そして涼花に向き合うように体を横にし、肩肘を立てた。
「私さ。前の晩にお酒に飲まれて、侑李とシたことなんて全然覚えて無くて、見知らぬ人と寝ちゃったって自己嫌悪してたんだ。だけど今は、あの時出会ったのが侑李で良かったって思って――」
「ちょっと、待て」
言っている意味が解らん。
唐突に何を言い出すかと思ったら、そういうことか。
こいつ、また勘違いしている。
早めに誤解といておかないと後で面倒だ。
「お前、勘違いしてる。あの日は、お前を抱いていないぞ」