人間嫌いの小説家の嘘と本当
「失礼します」
彼女は私のサイズを測るように肩やウエストを触り、少し離れたかと思うと、いくつかの洋服を手に取りフィッティングルームへと誘う。
そして、そこからは着せかえ人形状態。
服を着ては侑李に見せ、彼が気に入るものだけを購入するという、私の意見はそっちのけの不可解な状態が小一時間続いた。
結局、十数着を購入することを決め店員に指示する。
「侑李、ちょっと待って。私そんなに、お金ないよ」
「気にすることはない」
そこは気にするでしょう。それ私の服でしょ?
結婚するつもりだったから貯金はそれなりにあるけど、それにしたって買い過ぎだ。
絶対この店高そうだし、請求額が怖い――。
「よし、次行くぞ」
「え、次って……まだ会計してないよ?」
購入を決めた服を受け取ることなく、お店を出ようとしていた。
状況が上手く呑み込めない。何が、どうなってるの?