人間嫌いの小説家の嘘と本当
「じゃ、送っておいて」
当り前のように彼は片手を上げ告げると、店員は爽やかな笑みを浮かべて深々とお辞儀を返した。
まさかの暗黙の了解ってやつですか?
車も外車だったし執事もいるし、これがセレブの買い方なの?
侑李とは身長差が二十㎝くらいあるけど見えない訳ないよね。
彼の目の前で手を振ったりしても、完全スルー。
「ちょ、侑李。服は?お金は?」
私の声を無視をし続ける彼を引き止めようと袖を引っ張る。
するとサングラス越しに鋭い視線で睨まれた。
「煩い。黙れ」
お、怒られた……なんで?
戸惑っている私を他所に、侑李はサングラスを掛け再び歩き出す。
私は、それ以上何も言えず彼の後をついて行くことしか出来なかった。
その後も、いくつかのブティックに立ち寄り靴やらバッグを即決。
そして下着までも、顔色ひとつ変えずに購入していく。