人間嫌いの小説家の嘘と本当
丁寧な所作で名刺を差し出す有栖川さん。
年を言えば私と同い年か少し上くらい。
童顔で可愛い系の男の人だ。
名刺に視線を落とせば、多くの作家が出版している大手出版社の名前が書かれている。
え、出版社の編集者?どうして、そんな人がここにいるの?
「あ、私は蒼井涼花と言います。侑李の――」
「秘書の方ですよね?先程、櫻井さんから聞きました」
えっと、秘書じゃないんだけどな。
でも櫻井さんがそう言ったなら、それでもいいか。
説明するのも面倒だし。
「先生の作品、好きなんですか?」
「はい。私、鳳先生の大ファンなんです」
さっきまで読んでた本を胸に抱きしめ、満面の笑みで答える。
すると冷ややかな声が私の後ろから聞こえてきた。
「ふ~ん。俺のファンだったんだ」
その声に顔が凍り付く。