人間嫌いの小説家の嘘と本当

少しでも期待した私が馬鹿だった。
彼と付き合ってきた五年間は何だったの?
何が、真面目よ。みんなの前だけ取り繕って、裏じゃ二股してたなんて信じらんない。

しかも“子供が出来た”だなんて――。

そんな裏切り方ってアリ?
恋は盲目だって、よく言うけれど
そんな彼の本性に今まで気が付かなかった私も、どうかしてたわ。

震える手は、きっと悔しいから。
滲む視界は、こんな彼を見たくないから。
私は振られたんじゃない。私が、振ったのよ。
結婚前に、彼の本性が分かって良かった。
そうよ。良かったのよ。


自分に言い聞かせるように、何度も繰り返す。
けれど頭で理解しようとしても、心が悲鳴を上げ続ける。
痛くて苦しくて、耐えられそうにない。

< 9 / 323 >

この作品をシェア

pagetop