人間嫌いの小説家の嘘と本当
一瞬浮かんだ、ある気持ちを吹き飛ばすように、手の甲でゴシゴシと顔を擦った。
「ふ、あはは……変な顔」
「変な顔じゃ――」
ない、と言おうとして止めた。
だって侑李が声を上げて笑ってる。
こんな侑李、初めて見た。レアもレア。超が付くほどに貴重だ。
あ~写メりたい。
驚いているのは私だけじゃなかった。
櫻井さんも、シュークリームが乗せられたお皿が、その手から落ちてしまいそうな程に、瞬きせずにみつめている。
「侑李さ、ま……」
「ん?どうかしたか、櫻井」
ひとり何でもないように返事を返し、またシュークリームを頬張る。
「私は、嬉しゅうございます」
櫻井さんは、ハンカチで目元を拭いながら喜んでいる。
侑李が声を上げて笑うことが、そんなにも珍しく凄いことなんだ……。