人間嫌いの小説家の嘘と本当

もしかして、人生初とか?
なんだか私も嬉しくなって、胸の奥が熱くなる。

侑李の興味がある事、嬉しい事、楽しい事。
もっと彼のことを知って、侑李の笑顔をたくさん見てみたい。

週末――。
今日も、侑李は「夜の散歩」に出掛けた。
もちろん私も、ボディーガードとして同行。

今日の侑李は小説が行き詰まっているのか、普段よりも言葉少なめだ。
少しピリピリとした苛立ちが、隣に立っている私にも伝わってくる。


何か力になれること、無いかな。
と言っても小説のことは全然わからないし、文才のない私があーだこーだ茶々を入れても、侑李の機嫌を損ねるだけ。

今は、少しでも侑李がリフレッシュ出来るように周りに気を付けよう。
こんな時に、奴らに邪魔されたら台無しだもんね。

街に出た私達は、侑李の行き付けのBAR「Crimson Bird」のドアを開いた。



「いらっしゃい」



いつもと変わらず、マスターが笑顔で迎えてくれる。
それにも返事を返すことなく、侑李は指定の位置に座った。

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