後ろの席はちびの速水くん


「...という話が昨日ありまして...」



「えっ!!??」



香はびっくりした声を上げた。



まあ無理もないか。



むしろあたしの方がびっくりしたし。



「はぁ...どうしよう...」



「でも、奈々はまだ北見くんに気持ちがあるって西崎くんは分かってたのにも関わらず告白したんでしょ?よっぽど奈々の事が好きなんだよね」



「...」



駿くんのことも、司くんのことも。



全然ついていけなくて。



頭がパニックになる。




「でもあたしのどこがいいのかな」



顔は特別可愛いとかないし、中身も普通だと思うけどな。



「奈々は沢山良い所あるんだから」



「そうかな」



「そうだよ。西崎くんのこと、どうするの?」



「...でも今は...考えられなくて...だけどあたし、はっきり断れないから...」



曖昧な返事しかできなくて。



それで結局、人を傷つけてしまうんだ。



だけど、あたしのことで誰かが傷つくのは嫌だから。



だから...そうはっきりと断れない。



「そっか...あたしは西崎くん、いいと思うけどなぁー」



確かに中身いい人すぎるよ。



香はそう言って笑った。



だけどその日から、



司くんと目を合わせることも、



話すことも無くなった。



恋愛って怖いなって思った。



今までの楽しかった事が一気に崩れていく。



無くなっていく。



昨日まで、あんなに仲良くてわいわいしてたあたし達が



次の日から一言も話さなくなるということ。



それが一番怖いと思った瞬間だった。



「水原さん?」



「...あ、はい!」



「どうしたの」



後ろの席の速水くんがあたしにそう言った。



「え、どうしたって」



「いや...司となにかあった?」



「え...」



「喋ってなくね?」



「...うん」



あたしは速水くんにも昨日のことを話した。



速水くんは司くんと仲良しだし分かってくれるだろうと思って。



「は?マジで?」



「...うん、」



「いやー、マジか」



「マジです...」



「なんて言ったの」



「まだそんな事考えられないって」



「そっか。あいつタイミングがわりぃ」



「タイミング?」



「いやまだはえー」



「...」



「マジかー」



さっきからマジかマジかって。



「話してあげたら?」



「うん...頑張ってみる」



あたしは別にいいんだけど



あっちがあたしを避けてるみたいだからむしろ。



「やっぱだめ」



「へ?」



「俺が寂しい」



「あ...はい」



はい?



まあいいや。



司くん、あたしのこと嫌いになっちゃったのかな。



ちょいちょい見られてる感じはするんだけども。



はぁ...辛い。



「あ、速水くんは大丈夫?」



「もう大丈夫。ふっ切れた」



「そうなんだ」



「まぁ付き合ったの三ヶ月だったしな」



「そっかー」



「もう何も思ってないよ」



「うん、」



速水くんが元に戻って良かった。



いつの日かあたしは、速水くんの笑顔が大好きになった。

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