後ろの席はちびの速水くん

駿くんと別れて2週間。



司くんと突然話さなくなって1週間。



そして春休みに入って初めてのお出かけです。



そう、速水くんとの海の日。



「よ」



「あ、速水くん」



海の最寄り駅で待ち合わせをした。



「おう」



「速水くん、焼けたね」



「部活で。今からもっと焼ける」



「そっかー、サッカー部キツそう」



「キツイねー」



「あたしもサッカー大好きなんだ」



「え、マジで!」



「うん!中学校の時にね、よく部活サボってサッカー観戦してたんだー」



「サボってたんかい」



「はい...」



「サッカー俺も見るの好き」



「する方は?」



「するのも好きだよ」



「そっか!あたし、今度速水くんのサッカー見てみたいな」



「下手くそだけど」



「下手でも見てみたいよ」



「見ればいいじゃん」



「ほうほう」



海について砂浜にレジャーシートを引いた。



お菓子を沢山並べた。



「好きなの取っていいからね」



「せんきゅ」



速水くんってやっぱり学年1イケメンなんだね。



皆がそういうのが分かるよ。



「なーん」



速水はあたしの目線に気づいたのかそう言った。



「別に?」



「あっそ」



「速水くんって身長何センチ?」



「は、バカにしとろ」



「してないよー」



「165しか無いけど」



「えっ!」



「は」



「身長伸びたよね!」



「...伸びたけど」



「へー、1年生の頃はあたしと変わらなかったのにー」



「ふざけんな、充分過ぎるほど差あったわ」



「いやいやいやいや」



「150あんの?」



「ないけど?」



「148とか?」



「別に?」



「図星か」



「でも意外とあるんだね!」



「そうかな、170は最低ほしいね」



速水くんは学年1イケメンであって、



身長は低い主だった。



クラスの男子はほとんどの人が175とかだから速水くんは余計に小さく見えるの。



あたし達は1年生の頃同じ保健委員だった。



だから、速水くんの意外な優しさも



あたしは知っている。



「あたし達ってさ、」



「ん?」



「1年生の時、仲良かったよね」



あたしは遠くを見て言った。



海の向こう側にある橋がとても綺麗に思えた。



空もまた、綺麗だった。



季節はまだ春で少し肌寒いはずなのに、今日だけは違ってて、気持ちよかった。



「仲良かったね、懐かしい」



「ほんっとそれ!1年3学期も端っこの席で前後になったもんね!」



「うわ、懐かし」



あたし達は今回もまた、前後の席になった。



正直、また前後だってびっくりした。



「その時はテストの点数勝負したりー、委員会も同じだっからねー」



「俺が寝てたら寝ないでーって起こしてくるし、携帯してたらせんでーって言ってくるし」



「だって速水くん結構寝るんだもん」



「まぁ...」



「携帯なんかゲームしてるんでしょ」



「そうですが」



「全くノートも取らないで」



「うるせ」



速水くんはそう言って笑った。



そうだよ、この笑顔...。



可愛い。



「速水くんってさ、」



「夕陽って言ってみてよ」



「へ?」



「司の事は司って呼ぶじゃん?」



「くん付けてるし」



「なら俺の事はくん付なしにしてよ」



「え」



くん付なしとか無理無理。



ただでさえ駿くんをくん付してたのに。



「言ってみて」



「...ゆ...」



「ん?」



「...ちょ、ちょっと待った」



「は?」



「無理、やっぱ無理」



「ここまで来といて」



「いやいやいや普通に無理でした」



「もーいいし、いつか言ってよ」



「はいはーい」



そう適当に返事をしたら夕陽に叩かれた。



「痛いし!」



「嘘はいらん」



夕陽といたら楽しくて、



あたしはいつの間にか駿くんのことを考えなくなった。



と言うよりも、忘れてしまってた。

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