シークレットポイズン
「3回デートしたら、告白ってしなきゃまずいですかね。」
「え?そんなコがいるの!?」

 小川の声のトーンがぐっと上がる。そんな可愛らしいリアクションを取れない美樹は、ただあんぐりを口を開けることしかできない。

「…まぁ、一応?」

 ちらりと美樹に向けられた藤澤の視線。その視線の意味が全くわからない。何か言えということなのか、それ以外だとしたら何なのか。

「えー!どんなコ!?」
「サバサバした感じの人です。」
「ふぅーん。」

(…好きな人、いるんだ。いるかそりゃ。藤澤さん、モテそうだもんな。)

 一人で勝手に納得してみることにした。藤澤の気の利き様、盛り上げ上手な姿、人との距離感の上手さなどここ3ヶ月でおそらく女子に好かれるであろう要素は見つけた。そういうものを使って上手に恋愛する人なのだろう。

「で、頑張ってるところなんだね。」
「そうですね。」

 サラリとそんなことを言ってのける若者に眩暈がしそうだ。自分も確かに若者に入るけれど、こんな風にはとてもじゃないけど言えない。

「じゃあ話を戻そうか!それで美樹さんはどう?」
「…私に戻るんですか、話。お話できるようなこともないんですけど。」
「好きなタイプだよ!理想は誰にだってあるでしょう?」
「…そうですね。」
「美樹さんの理想、はい!」

(…理想、ならある。ただ、それは到底実現できるものとは思えないんだけど。)

「…頑張らなくていい人。」
「え?」

 頑張りたくない。仕事でこんなに頑張っているのに。外面良くして頑張ってる。だから、頑張りたくない。恋愛では。

「私が頑張らなくても、一緒にいてくれる人がいいです。」

 そんな人はいない。わかっている。でも理想なのだから自由に言わせてほしい。
< 17 / 19 >

この作品をシェア

pagetop