シークレットポイズン
(どうしてこうなった…。)
仕事ができない方ではないはずだ。2年の経験で培ったものは美樹を裏切らない。少なくとも今まではそうだった。それなのに、こんなにも上手く回らない仕事があるなんて。
(…安全ってこんなに重いんだ…。)
もうすでに、提案資料だって二つくらいは出した。集団下校の方面の提案をして担当を割り振り、今は全校児童の名簿を作っている。やらなくてはならない仕事は山ほどあるのに、何をどうお願いすればいいのかわからない。きっとこれがだめなのだろう。しかし仕事の終わりが見えていないのだ。途中を任せて最後にまとめ上げるなんてことができそうにない。ならば自分でと思ってしまう。
「…あの。」
「はい?」
ぼんやりとした目のまま、美樹は顔を上げた。その先には真っ直ぐな目の新人がいた。
「…手伝えることあったら、言ってください。」
いつの間にか深山がいなくなった職員室に響く、小さな声。
「あの、…えっと、ごめんなさい。何をどうお願いしたらいいのか…わからなくて。」
「…すみません。僕のせいですよね。体調悪いのもずっと続いていますし。」
疲れて頭の働かなくなった状況でも、彼が言わんとしていることはわかる。そもそも最初の段階では彼が安全の仕事を受け持つことになっていたのだ。しかし、新人の彼にそんな仕事が務まるはずもなく、周りからの目もあり美樹が安全の仕事を引き受けることになったのである。新人の彼に安全を任せることにした教頭の頭がどうかしていると思っていた美樹としては自分に回ってくるのは仕方がないと腹を括っていただけに、彼からこんな風に謝罪を受けることは予想もしていなかった。
「え、いや…藤澤先生のせいじゃないですよ。普通に考えて初任の先生に安全は無理です。私も初任の頃だったら無理だったし。」
実質、3年目でもダメそうだけどとは言わない。そこはプライドでしかない。
仕事ができない方ではないはずだ。2年の経験で培ったものは美樹を裏切らない。少なくとも今まではそうだった。それなのに、こんなにも上手く回らない仕事があるなんて。
(…安全ってこんなに重いんだ…。)
もうすでに、提案資料だって二つくらいは出した。集団下校の方面の提案をして担当を割り振り、今は全校児童の名簿を作っている。やらなくてはならない仕事は山ほどあるのに、何をどうお願いすればいいのかわからない。きっとこれがだめなのだろう。しかし仕事の終わりが見えていないのだ。途中を任せて最後にまとめ上げるなんてことができそうにない。ならば自分でと思ってしまう。
「…あの。」
「はい?」
ぼんやりとした目のまま、美樹は顔を上げた。その先には真っ直ぐな目の新人がいた。
「…手伝えることあったら、言ってください。」
いつの間にか深山がいなくなった職員室に響く、小さな声。
「あの、…えっと、ごめんなさい。何をどうお願いしたらいいのか…わからなくて。」
「…すみません。僕のせいですよね。体調悪いのもずっと続いていますし。」
疲れて頭の働かなくなった状況でも、彼が言わんとしていることはわかる。そもそも最初の段階では彼が安全の仕事を受け持つことになっていたのだ。しかし、新人の彼にそんな仕事が務まるはずもなく、周りからの目もあり美樹が安全の仕事を引き受けることになったのである。新人の彼に安全を任せることにした教頭の頭がどうかしていると思っていた美樹としては自分に回ってくるのは仕方がないと腹を括っていただけに、彼からこんな風に謝罪を受けることは予想もしていなかった。
「え、いや…藤澤先生のせいじゃないですよ。普通に考えて初任の先生に安全は無理です。私も初任の頃だったら無理だったし。」
実質、3年目でもダメそうだけどとは言わない。そこはプライドでしかない。