mariage
悶々としたまま、秀吾に続いて店を出た。

どんどん先へ進む秀吾について行っていたが、ホテルの外に出た途端、私は足を止めた。

「…ご馳走様でした。私はここで」

慌ててそう言うと、秀吾とは反対側に向かって歩き出す。

「待て」

秀吾の声が聞こえたが、聞こえないフリをして、先を急ぐ。

「待てと言ってるのが聞こえなかったか?」

「…」

皮靴の走る音が聞こえたかと思えば、左手を掴まれ、秀吾が私を振り返らせた。

…また、苛立った顔の秀吾が目に映った。

その顔を見ただけで、萎縮してしまう。

「もう遅い。家まで送ろう」
「えっ、い、いえ、そんな事していただかなくても…」

私の言葉に、眉間にしわを寄せてしまった。

「聞き分けのない女は嫌いだ」
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