mariage
怒った声が頭に降ってきて、更に萎縮して、涙目になる。

秀吾はもう黙ってしまって、そんな私の手を引いて駐車場に向かうと、助手席に押し込むように乗せると、自分は運転席に乗り込んだ。

…走り出した車の中は、音楽もなく、会話なんて当然なくて、静まり返っている。

聞こえるのは、外の雑音と、静かな車の音だけ。

…息が詰まる。

何を考えてるのか全くわからない秀吾と結婚したら、ずっとこんな息苦しい毎日を過ごさなければならないのか?

…いや、もしかしたら、結婚とは名ばかりで、一緒に住むことなんてないかもしれない。

視線だけを、チラッと秀吾に向ける。

真っ直ぐに前を見て運転するその様は、とても綺麗だ。

こんなに近くにいるのに、触れることすら出来ない。

…いや。

さっき、秀吾は私の左手に触れたな。

すらっとした指、それでいて、大きくてゴツゴツした男の手。
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