mariage
…間も無くして、自宅に到着した。

止まった車の中。意を決したように、秀吾に言葉を発した。

「…鮫島さん」
「…なんだ」

「どうしても今月中に引っ越さなければいけませんか?」
「…」

「…父が心配なんです。身の回りのことは、私が全てしてきたので」

そう言って、秀吾の顔を見た。

一瞬眉をピクリとさせたが、またすぐに元の表情に戻ると言った。

「三条社長も了承済みだ」
「…え」

「…家政婦を雇うと言ってたから、琴乃が心配することは何もない」

…私の知らないところで、着々と話は進んでいるようだ。

「…分かりました。…今月中には引っ越せるように準備をします。それでは、送っていただきありがとうございました」

そそくさと車から降りようとすると、…また、手を掴まれた。
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