mariage
…まだ父は帰ってきていない様子。

私はそそくさと自分の部屋に入ると、カバンをその辺に投げ捨て、ベッドにダイブした。

コロンと体を反転させ、仰向けになると、電気に指輪をかざした。

貰ったことも驚きだが、サイズがピタリと一致していて更に驚く。

触られたのだって今日が初めてだ。

指のサイズだって、誰かに言ったこともない。

「…キレイ」

どんな思いで、これを選んだんだろう。

何もかも、私一人に決めさせようとしてるのに、これだけは、秀吾が選んだ。

会社の為の結婚。

秀吾に、気持ちのかけらもないはず。

それなのに、選んでくれたキレイな婚約指輪。

…これを見ると、ほんの少しでも、私を想ってくれてるんじゃないかと期待したくなる。

それは、いけないことだろうか?
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