mariage
…それからしばらくは、取り留めのない話をして、千影の新たな一面を見て、少しばかり、親近感が湧いた。

「…所で、今日は、仕事でこちらへ?」
「…いいえ。…結婚式の打ち合わせに」

私の言葉に、千影はあからさまに驚いた顔をした。

「でも…お一人ですよね?婚約者の方は?」

「…仕事が忙しい人なので、私が決めてるんです」

そう言って困ったように笑った。すると、千影は何故か、怒った顔をした。

当然、私は意味がわからず首をかしげる。

「…そんな大事な事を、婚約者と決めないんでどうするんですか?結婚は、ふたりのものでしょう?」

「…いいんです。…この結婚は、そう言うんじゃないから」

言葉を濁しつつ、そう言って微笑む。

…でも、千影もゆくゆくは千堂物産の跡を継ぐ身。その言葉の意味がわからないわけがなかった。

「好きでもない男と、結婚するんですか?」
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