mariage
なぜ、この人に破談にされなければいけないのか?

私はなんだか、怒りが増していき、思わず椅子からガタンと立ち上がった。

「何も知らないくせに、勝手にそんな事言わないでください」

「…三条さん」

「もし、嫌われていても、私はこの結婚を取りやめるつもりはありません」

「落ち着いて下さい」

千影は何とか私を椅子に座らせた。

そして、周囲にペコッと頭を下げて、座り直す。

あたりの視線にようやく気付いた私は、肩をすぼめた。

「すみません…取り乱してしまって」
「いいえ、こちらも三条さんの気持も考えず、軽はずみな事を言ってすみません」

千影の言葉に首輪を振る。

「…でも、これだけは知ってて欲しい」
「…千堂専務?」

「…私は、貴女と知り合ったその日から、三条琴乃さん、貴女の事が好きでした。だから、貴女に辛い結婚はして欲しくない」

…千影が?私のことを?そんな素振り、一度もなかった。




「…俺の婚約者を誘惑しないでくれないか?」



私を、誰かが後ろから、ギュッと抱き締めた。
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