mariage
「…琴乃」
「…おはようございます」

「…」

私の言葉に、秀吾は答える事もなく、ジッと私を見つめている。

「…お休みとはいえ、そろそろ起きたいんですけど」

そう言うと、秀吾はギュッと私を抱き締めた。

「…鮫島さん?」
「…秀吾だ」

「…」
「…結婚したら、琴乃も鮫島になるだろ?」

「…でも」
「…呼び方は琴乃に任せる。今からもう、鮫島とは呼ばせない」

「…」

…仮にも、秀吾は私より年上だ。呼び捨てなんて、出来るわけがない。

「…ほら」
「…ぇっと、じゃあ…秀吾、さん」

なんだか、私の呼び方が気に入らない様で、不機嫌な顔。…私に任せるって言ったのに。

「…琴乃」
「…はい?」

「明日からもう、仕事には行くな。三条社長にも言ってある。代理の秘書も決まってる」

そんな勝手な。
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