mariage
「…なんですか?言ってください」

「…とにかく、三条社長の秘書は辞めろ。片時も俺の傍を離れる事は許さない」

そう言い捨てると、ベッドから起き上がり、寝室を出て行った。

…それからの秀吾はとても素っ気なかった。

何時も無表情か、怒った表情なのに、それすらもなくて、なんだか冷たい顔。

同じ空間にいるはずなのに、線が引かれたように違う世界にいるような気さえしてくる。

…私だけが、秀吾を好きなだけでは、やはり無理なのか。

この結婚は何が何でも破談にしなければならないのか?

…ふと、ベランダから椅子に座っている秀吾が見えて、アッと声が出た。

…だって、新聞を抱えたまま、居眠りしていたから。

私は、秀吾を起こさないように近くと、新聞を取り、ブランケットをそっとかけた。
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