mariage
…あれからどれくらい眠っていたのか?

気がつけば真っ暗で、何時だろうかと、置き時計に手を伸ばした。

…。

掴んだ物に驚いて、顔を上げる。そして掴んだ物に目をやると、それは人の手だった。

その手を辿れば、ここに居るはずのない人物が、いた。

「…やっと、起きたか」
「…どうして」

「…どうして?それはこっちのセリフだ。何故勝手にマンションを出て行った?」

「…こんな結婚止めませんか?…うちの会社の後ろ盾が欲しいなら、父に頼みます。鮫島さんが納得出来る内容を提示します。だから」

…ギュッと、秀吾が私の手を握りしめた。

薄暗い部屋の中。それでも、悲痛に歪んだ秀吾の顔がハッキリ見えた。

その顔を見ると、こちらまで苦しくなる。
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