mariage
それを見ているのも辛くて、私は披露宴会場からこっそり抜け出した。

抜け出しても、誰にも分からない。

披露宴はお偉いさんばかりで、個々に好き勝手に話すような、パーティー形式。

私はただのお飾りにすぎない。

テラスに出て溜息をついた。

「…主役の花嫁がこんなところにいていいんですか?」

その声に驚いて振り返る。

「千堂専務」
「…浮かない顔ですね?…愛されない結婚がこれほど辛いと、今頃気づいたんですか?」

「…」

痛いところを突かれ、涙目になる。

「…ここから、連れて逃げてあげましょうか?」

「そんな事」

「私なら、琴乃さんを必ず幸せにします」

この言葉を言ってくれるのが、秀吾なら、どれだけ良かったかしれない。
< 42 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop