mariage
そうは思っても、苦しい今は、ここから救い出してくれるなら、誰でも良かった。

私は自ら、千影に手を伸ばしていた。

千景も又、その手を取ろうと手を伸ばした。

…が。

それは許されなかった。

タキシード姿の秀吾が私の手を掴んだ。

「…披露宴会場から、花嫁を奪おうなんて考えていないよな?」

「そのつもりですが?」

千影の言葉に、秀吾は千影を睨んだ。

「…奪われたくなければ、琴乃さんを大事にしろ」

「…琴乃さん、いつでもお待ちしてますよ」

そう言うと、千影はその場からいなくなった。

…、重たい空気が流れる。

それを壊すかのように、秀吾は私の手を掴んだまま、披露宴会場を抜け出していく。

だが、誰も気にも留めない。

「どこ行くんですか⁈」
「…煩い、黙ってろ」

…ここは。
< 43 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop