mariage
そう思ったのは一瞬で、私はダブルベッドに押し倒された。

私の上に、秀吾が馬乗りになって見下ろしている。

…とても冷たい目で。

「…まだ、披露宴の途中」
「俺たちが居てもいなくても、あの場は関係ない」

「…」
「…琴乃、あいつの事が好きなのか?」

「…あいつって」
「千堂千影だ」

その名前に驚いて、首を振る。

「じゃあなぜ、あいつの手を取ろうとした?」

「それは…」

「答えろ」
「…秀吾さんが、私じゃない女の人を見てるから」

「…」
「…秀吾さんは、私の事なんて見てくれない。それが辛いだから!」

そこまで言ってハッとした。

…自分の気持ちを言ってしまった。好きだと言った訳じゃない。

けれと、告白と同じだ。

私は、秀吾から、精一杯顔を逸らした。
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