mariage
…緊張で、冷たくなった唇に、秀吾の温かな唇が触れた。

優しく、重なった唇。このキスの意味が理解出来なくて、閉じた瞳に涙が溜まり、零れ落ちた。

…唇が離されたにも関わらず、間近に感じる秀吾の体温。

私は恐る恐る目を開けた。

「…何故泣く?」
「…秀吾さんが、何を考えているのか分からなくて…不安で」

震えた声で呟くと、秀吾は涙が伝った場所を優しく拭った。

「…琴乃は俺のモノだ。お前が愛しくてたまらない」

…秀吾の愛の甘い囁きに、目を丸くした。

聞き間違いじゃないだろうか?そう思ってしまう。

涙を拭った手は、私の頬を優しく包み込んだ。

「…お前を幸せにする。それが、三条社長と交わした契約だ」

「…秀吾さんは、…私の事、好き?」



「…好き?そんな言葉じゃ言い尽くせない程、琴乃を愛してる」

そう言うと、秀吾は溢れて抑えられなくなった気持ちを伝えるように、幾度も私にキスをした。
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