mariage
3.甘い誘惑と不安の狭間で
…その夜は、極上に甘い時間を過ごした。

愛する人に抱かれるって、こんなにも幸せなんだと、初めて知った。

…一緒に住み出して、毎晩のように抱き締められて眠り、朝起きてなんだか切ない気持ちになっていた時とは、大違い。

私は、まだ眠る秀吾に擦り寄るように抱きついて、幸せを噛みしめた。

…私、この人と、本当に結婚したんだな。

「…琴乃…どうした?」
「…ぁ、ぉはよぅ、ございます」

突然声をかけられて驚いて変な声になってしまい、目を泳がせる。

すると、クスッと笑い声が聞こえ、思わず視線を秀吾に向けた。

…とても自然な笑みに、驚きつつ見惚れた。

「…琴乃」
「…はい?」

「…琴乃」
「…はい?」

「…琴乃」

何度も名前を呼ぶのに、それ以外言葉を発しない秀吾に、首をかしげると、秀吾はまたクスッと笑って、私をギュッと抱き締めた。
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