mariage
でも、そんな事を聞く勇気がなくて、目だけで訴えてみる。

「…不安なのは分かる。だが鮫島君は、公私ともに頼れる男だと思う。私が認めた男だ。安心して嫁に行きなさい」

そう言われても、納得出来るはずもなく。困惑顔のまま、社長を見つめた。

数秒後、ポツリと出た言葉は。

「結婚しても、秘書は続けてもいいの?」

「続けたければ続ければいい。だが、結婚生活に支障が出るようなら、やめても構わない。秘書の代わりはいるが、妻となるお前の代わりは居ないんだから」

「…」

…私の気持ちは置き去りにされたまま、話は確実に進んでいくのだなと、この時思った。
…秀吾の気持ちが聴けたら、なんの迷いもなく進めるのに。

彼の口から、私が好きだと言ってくれるなら、何もかも委ねられるのに。

< 5 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop