mariage
『鍵は開けるな、誰が来ても出るな』

と言われているため、出るわけにはいかないが、誰が来たのか、気にはなる。

私は静かにドアに近づくと、覗き穴をそっと覗いた。

…、ドアの向こうの人を見て、私は思わず口に手を当てた。

しかも向こうの目と視線が合った。

向こうには、私の目は見えていないはず。でも、合ってしまったこちらはドキッとする。

…何度かインターホンが鳴ったが、誰も出てくる気配がないと悟った相手は、やっと踵を返し帰って行った。

…今の訪問者は、何時もの、秀吾の隣にいる、絶世の美女だった。

…こんな時間だ。どう考えても、秀吾はいないとわかるだろう。

という事は、私に会いに来たのか?

秀吾を返せと言われるんじゃないかと思うと、怖くてたまらなくなる。

…それからの私は、憂鬱なまま、1日を過ごした。
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