mariage
…午後8時。秀吾はまだ帰らない。

早く帰らないかなと、待ちわびていると、再びインターホンが鳴った。

流石に今度は秀吾が帰ってきたのだろうと、私は早足で玄関に向かうと、覗き穴も確認せず、ドアを開けると、その人に飛び込んだ。

「お帰りなさい」
「…大そうなお出迎えですね」

「…え?…ぁ」

…秀吾じゃなかった。

私は慌てて離れようとしたが、羽交い締めされ、身動きが取れなかった。

困惑しつつ、見上げる。

「…秀吾さんだと思ったんです。お願いです。離してください、千堂専務」

「もうしばらくこのまま」
「…離して」

「自分から抱きついたのに?」
「だから」


「離せと言ってるのが分からないか、千堂千影」

「…鮫島秀吾」
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