mariage
…その夜、秀吾は私を抱かなかった。
抱かれたかった訳じゃない。でも、すごく不安で、秀吾が何を考えているのか、わからなくて。
…結局、ほとんど眠れないまま、朝を迎えた。
身支度を済ませた私は、秀吾に連れられて会社に向かう。
「…初めまして、鮫島社長の秘書をしている大路(おおじ)と言います。これから、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げたのは、社長秘書の大路春彦(27)。メタルフレームに、少し長い前髪がかかる。見るからにインテリそうな大路は、とてもとっつきにくそうだ。
共に仕事をするとなると、大変そうだなと思った。
「宜しくお願いします」
「…鮫島さんとお呼びするのは、社長と同じで、何かと混乱する事もあるでしょうから、琴乃さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい、勿論です」
「…では。琴乃さんは、秘書の経験がおありと聞きました。何かと、頼りにしてますので」
…冷たい眼差しで言う大路に、私は苦笑するしかなかった。
抱かれたかった訳じゃない。でも、すごく不安で、秀吾が何を考えているのか、わからなくて。
…結局、ほとんど眠れないまま、朝を迎えた。
身支度を済ませた私は、秀吾に連れられて会社に向かう。
「…初めまして、鮫島社長の秘書をしている大路(おおじ)と言います。これから、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げたのは、社長秘書の大路春彦(27)。メタルフレームに、少し長い前髪がかかる。見るからにインテリそうな大路は、とてもとっつきにくそうだ。
共に仕事をするとなると、大変そうだなと思った。
「宜しくお願いします」
「…鮫島さんとお呼びするのは、社長と同じで、何かと混乱する事もあるでしょうから、琴乃さんとお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい、勿論です」
「…では。琴乃さんは、秘書の経験がおありと聞きました。何かと、頼りにしてますので」
…冷たい眼差しで言う大路に、私は苦笑するしかなかった。