mariage
「…玲子、お前には関係のない話だ」

…玲子って。もしかして。

見ちゃいけない。そんな事は分かっている。でも、確認せずにはいられなかった。

「…奥様も可哀相に。婚姻届なんて、提出されてない。偽装結婚なのに、そんな事も知らないで、結婚生活を送り、貴方の嘘の甘い言葉に酔って」

「…玲子、いい加減に」
ガダッ!

私はそれ以上聞いていられなくて、そこから逃げ出した。

偽装結婚って何?

婚姻届なんて提出されてない?

愛してると言ってくれたあの言葉は、全て、何もかも嘘なの?

…私は最初から、ずっと片想いのまま。

秀吾は、私の事なんて、愛してなかった。

そう思っただけで、涙が止まらなくなった。

…あのマンションには、帰れない。

実家にも帰れない。父に要らぬ心配はかけたくない。

私はただひたすら歩いていた。
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