mariage
…安心したせいか、私はいつの間にか、ソファーで寝てしまい、千影もまた、一緒に眠ってしまっていた。

カーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚めた私は、真横で眠る千影に気づき、驚きつつもなんだかホッとする自分がいた。

このまま甘えてしまおうか。

なんて、甘え心が頭をよぎる。だが、甘えているばかりではいけない。

千影を起こさないようにソファーから起き上がると、寝室であろう場所から、掛け布団を取ってくると、そっとかけた。

千影は目を覚まさない。私はそれに安堵した。起きてしまえば、引き止められるかもしれないと思ったから。

引き止められれば、甘えが出るのは分かっていた。

だから、早くここから立ち去りたかった。

千影の寝顔に礼を言った私は、千影のマンションから出ると、自宅に戻った。

突然の朝の帰宅に、父は驚いていたが、意外な事に何も聞いてこなかった。
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