mariage
…今日は、1日秀吾は社外での仕事。重要な案件ばかりで、大路も同行しなければならず、私は、秘書室で雑務をこなしながら、電話番。

とは言え、大路は一人でこの業務を一人でこなしていたかと思うと、ただただ感心するばかりだ。

何も、余所事を考える時間もないまま、1日があっという間に過ぎていく。

…気がつけば、時計はもう就業時間を過ぎていた。

「…6時か」

会社に帰ってくるはずの秀吾達はまだ帰って来ない。

『俺が帰って来るまで、ここにいろ』

秀吾が、会社を出る前に私に言い残していった言葉。

…大路に、秀吾を信じろと言われたけれど、理由も分からず信じる事が出来るだろうか?

普通なら、出来ない。

「…私に、どうしろというの?」

そう言って溜息をついた。

「…貴女が、琴乃さん?」
「…え?」

静かに開いたドアから、澄んだ女性の声が聞こえてきた。
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