mariage
…初めて、間近で見た。

「…あなたは?」

遠目に見た事があるだけ。この間、やっと名前を知ることが出来た。

三浦玲子。

秀吾に一番近い女。

全ての事情を知る女。

いつかは、話す時がくるかもしれないとは思っていたけど、まさか、こんなに早く話す時がくるとは思わなかった。

「…全然知らないとは言わせないわよ。貴女と私は、何度か会ってる。まぁ、会ってると言っても、遠目にだけれど」

私は、何も言えず、ただ、玲子を見つめていた。

「…悪い事は言わないわ。貴女が深く傷つく前に忠告しに来たの。秀吾と別れなさい。貴女みたいなお嬢様に、秀吾は扱えやしないわ」

「…そんな、事」

「…なぁに?」

「わからないじゃないですか?」

私の言葉に、玲子は鼻で笑う。

「…籍も入れてないのよ?結婚するって言ったくせに。その事も知らなかったのよね?秀吾は貴女なんて愛してない。もし、貴女が秀吾を好きになったとしても、永遠に、秀吾が貴女を好きになる事なんてないわ。私がいる限りね」
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