mariage
その声に驚いて振り返ると、外から帰って来た秀吾だった。

私の顔を見た秀吾は、顔をしかめた。

涙で、グチャグチャの顔だ。驚くのも無理はない。私は顔を逸らすと、鞄を手に取った。

そして、何も言わず、秀吾の横を通り過ぎる。…が。

簡単には通してくれない。それどころか、私を抱きしめた。

「離して」
「離さない。離すわけないだろ?一体どうした?何があった?」

「…くせに」
「…何?」

「…赤の他人のくせに!もう私に関わらないで!」

そう言いながら、何度も秀吾の胸を叩いた。が、その手を握り締められてしまった。

「琴乃」
「…や!」

「俺の話を聞け!俺とお前は、れっきとした夫婦だ。誰もが認める、正真正銘の」

「うそ!うそよ!何もかも、全「…好きだ」

突然の言葉に、体がビクつく。
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