mariage
「…俺の妻に何か用か?」

琴乃の肩を握る千影の手をぎゅっと握って問いかけた。

一瞬驚いた千影だったが、直ぐに笑みに変わる。

「…俺の妻?…聞きましたよ。鮫島さんと、琴乃さんは、籍が入っていないとか」

「なっ」

なぜ、そんなことを知ってる?俺は思わず琴乃を見た。

…が、琴乃は首を振る。

琴乃は、千影には、何も話していないようだ。

俺は視線を千影に向けて、少し睨んで見せる。

「琴乃さんじゃありませんよ。ちょっと小耳に挟んだんですよ」

「…誰だ?」

「私の大事な身内です」
「…玲子か?」

そう言葉にしたものの、二人の名字は違う。互いの親戚に、そんな名字の人がいることも聞いたことはなかった。

「…玲子と私は兄妹なんですよ」

目を見開いた俺を見て、千影は笑う。
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